世界一明るいニューオリンズ式のお葬式「ジャズ葬」に隠された悲しい歴史
2016/06/02
目次
ニューオリンズのお葬式「ジャズ葬」とは
ジャズが生まれた地…として有名な、アメリカはルイジアナ州ニューオリンズ。発生の地と言うだけあって、ニューオーリンズではお葬式にもジャズが根付いています。
正式にはセカンドラインと呼ばれるリズムの音楽で、このニューオリンズ式の葬式がジャズの元になったとも言われています。
もともとは17世紀に、アフリカ大陸に存在したダホメ王国などで行われていたものが、アメリカに伝えられたものだとか。
現在のように、ブラスバンドが盛大に演奏をするようになったのは、18世紀に入ってからと言われています。
日本ではお葬式というと、しめやかかつ厳かに行われるものですが、ジャズ葬はむしろにぎやかに、明るく死者を送り出す儀式です。
ジャズ葬の特徴
日本をはじめ、各国の一般的なお葬式は、多少の様式の違いこそあれど、故人を弔い、その死を悲しみつつ、天国へと送り出すもの。
しかしニューオーリンズのジャズ葬はというと、死者が天国へ旅立つことを祝福する儀式です。
多くの人たちが故人の入った棺を墓地まで運ぶ…という部分は、西洋のお葬式の基本的な形です。
例にもれず、ニューオリンズでも親族や知人による、棺を運ぶ葬列を作ります。
しかしその葬列の様子は他のどんなお葬式とも一線を画すものです。
なんと棺を運ぶ道中、ブラスバンドの演奏する明るいジャズにあわせて、参列者もいっしょにお祭り騒ぎをします。
ときには棺をお神輿のように揺さぶったりすることもあるのだとか。
驚くだけでなく、場合によっては不謹慎に感じられる人もいるかもしれません。しかしニューオーリンズ葬がこのような形になった背景には、複雑で悲しい理由があるのです。
参考:ニューオリンズのジャズ葬
ニューオリンズでジャズ葬が生まれた背景
奴隷として虐げられてきた黒人たち
ジャズといえば、さまざまな音楽のルーツのひとつですが、やはり見逃せないのが、黒人によって生み出された音楽であるということ。
そして黒人たちは、長らく奴隷として搾取され、虐げられ、そして人種差別によって迫害されてきました。
それに加えてニューオーリンズは湿地帯であり、昔から黄熱病や天然痘といった伝染病の耐えない土地でもありました。
奴隷としての使役や人種差別のほかにも、病気等でいつ命を落とすかわからない。今隣にいる人が、いついなくなってしまうかわからない。
ニューオリンズの黒人奴隷にとって、現世はただただ苦しみと悲しみに満ちたものだったのです。
死による苦しみからの解放
そしてそんな辛い生から解き放たれる、唯一にして最大の救いが死だったのです。
死によって生の苦しみから解放された仲間への祝福。
明るく楽しげなばか騒ぎの裏側には、黒人たちの悲しい歴史があったんですね。
ちなみに日本でもお馴染みの「聖者の行進」は、もともとはニューオリンズ葬において演奏されていた曲です。
それぞれの文化によるお葬式の違いと共通するもの
日本をはじめ、死を悲しいものとして捉えている文化圏からすると、ニューオリンズのお祭りのようなジャズ葬は衝撃的に、人によっては不謹慎にさえ思えるものかもしれません。
文化や人々の境遇により、葬儀のスタイルには多様な変化が生まれます。
しかし、その根底にある、亡くなった大切な人への想いは共通するものなのではないでしょうか。